お節介の代償

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診察室を出て初めて、自分が救急外来ってとこに来てたらしいってのがわかった。 救急車で運ばれてきたわけだし、出入り口にでかでかと書いてあるから分からない方がおかしいか。 よくドラマでやってるあれだ。 でも、なんかそんな感じしなかったけど、たまたまかな?まぁいいか。 なんて思いながら窓口に声をかけたら 窓口の人に 「お支払いは、済んでおります。先程お兄さんがお見えになって、今、薬を受け取りに行って下さってます。薬の受取窓口は、あの角を曲がったところです。」 と言われた。 俺に兄貴は居ない。 何となく事を察した俺は言われた場所に行った。 そこには想像したとおり、超挙動不審な〇〇さんが居た。 こっちには気付かない様子だから、後ろから声をかけたら 『ビクッ!』 って効果音が聞こえてきそうな反応をして、俺を見て一言。 「大丈夫??」 ちょうど折れた辺りを一発、殴ってやった。 「痛い!いきなりなにするんだよ。」 とか言うもんだから 「誰かさんのせいで、ここが痛いんだよ。〇〇さんよりずっとな。」 と言ったら 「そうだよね。薬貰っておいたから帰ろう。送るよ。」 と謎のジェントルマン発言、支払いも済ませてある辺りもスマートだ。 ただ、相手というか対象を間違えている。 でも、今回はこのくらいして貰わなきゃ割に合わない。 これの原因の一端はこの人にあるのだから 帰りの車の中で 「これからも治療費請求すっからな。」 と冗談で言ったらこっちを向いて真顔で 「もちろん、そのつもりさ。ちゃんと領収書貰っておいてよ。ごまかしはなしだからね。」 と言ってきた。 「わかってるよ。かさ増し請求してやろうと思ったのにちゃっかりしてるな。ってか運転中によそ見すんなよ、バカ!」 と笑って話していたら、もうウチの前だった。 「〇〇さん、送ってくれてありがとう。病院は自分で行けるから。じゃぁ、たぶん、また明日。おやすみなさい。」 って言って車を降りようとしたら 「家まで送ってきて言うのも何だけど、今日はウチに泊まっていかないかい。」 と言ってくれた。 「また出たジェントル!、心配し過ぎだよ、大丈夫。なんかあったら救急車呼ぶって、白衣の天使とも約束したから。」 そう言ったら 「…わかった。ごめんね、ありがとう。」 そう言って〇〇さんは帰っていった。
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