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けど、パッと先輩の握っていた竹刀が消えた。
「メェェェェン!!」
バァンッ!
上級生の面あり一本だった。巻き上げで飛んでいった竹刀を拾いにいく先輩の背中には哀愁が滲んで素敵だった。
両者は中央で向かい合い、一礼しては先輩はスラリと構える。いつも思うけど、ここで試合が終われば先輩はきっと優勝できると思う。だってめちゃくちゃ強そうだもん。
蹲踞しては立ち上がり、同級生が速攻をかけた。静かで鋭い踏み込みに、先輩は向き合っていたはずなのに反応できなかった。
「ドォォォォッ!」
バシィッ!
……そう、強そうなだけなんだ。
先輩は弱い、でもやたらと強そうだから主将を任せられているんだ! 逆にすごいよ! あたしより弱いのに主将なんだもん!
それでも周囲から不満も漏れないのは先輩が誰よりも努力していることを知ってるからだ。人徳のおかげだった。だから副将の上級生も手を抜かないんだ。
部活終わり、何十人と斬り捨てた剣豪のような雰囲気で先輩は言う。
「神喰、明日買い出しあるんだろ? ついていくからな」
「そ、そんな、先輩がやることはないですよ!」
「いいからいいから。十時に駅前な」
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