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「どうしても聞いて欲しいというならその限りではないが。それより、宮川さんは会津屋敷にまだ断りの返事を出してはいないようだ。どうする?」
「えっ?」
「御命をもう一度本気で受ける気があるかと聞いている。あまり日にちがないが、今からでも何とかする気があるのなら私も一緒に謝りに行ってやる」
「はいっ……!お願いします!」
オレは三郎さんに向かって座り直し、思い切り頭を下げた……ら、板の間に額をぶつけてしまった。火花が見えた。うっ、と声を殺してうずくまるオレに、三郎さんは真顔を崩して吹き出した。
「頭を下げるのは私にじゃなくて宮川さんに、だ」
「はい」
三郎さんは起き直ったオレの額をさすり、おかしそうに言った。
「たんこぶできてる」
「げ。マジですか?」
「尾形先生がいたら叱られてたな」
「……ですね」
もしご先祖様でなかったとしても、オレは三郎さんのことが好きだ。今まで何かを褒められても、その上で何かを頼まれたり任されたりしてもぶっちゃけ負担でしかなかったんだけど……この人に信じてもらえるならオレという人間もきっと捨てたもんじゃない。素直にそう思える。
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