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「灸。ほう。手がかりには弱いが悪くはないで。他には?」
「ううん……あ、意味は思い出せないんですが時々単語が思い浮かびます」
「例えば?」
「『ドエス』とか『ワールドカップ』とか」
「どえす?わーるどかっぷ?……ふむ」
「どういう意味かわかりますか?」
「さあなぁ。お国言葉か……地名、やろか」
「もしかして、えげれすの言葉じゃないのか」
濡れ縁から白い隊服姿で入って来たのは俺を助けてくれた二人のうちの一人――斎藤さんだ。
「えげれすの……?ほう。お侍はん、わかりますんかいな」
「学び始めたばかりだから詳しいというほどではないが……『どえす』は俺にもわからんが、『わーるど』は『世界』、『かっぷ』は『湯呑み』ではなかったかな」
「世界の……湯呑み?」
「もしくは湯呑みの世界?どういう意味ですやろ……?」
斎藤さんはぶすっとして
「学び始めたばかりだと言っただろう。伊東先生に聞いてくれ。しかし、煙いな」
斎藤さんはゴホゴホせき込みながら脇に腰をおろした。
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