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「……ぷっ。変な顔。鏡見てみろ」
「うわああああ!」
たぶん、おでこに日の丸形のお灸の痕があってさらに鼻の頭に墨が付いていることを笑われたんだと思うが、こっちはそれどころではない。背後では墨が帳面にも畳にもこぼれて大惨事だ。
「藤堂さん!何してくれてんですか!」
三秒ルール以上のマッハで拭かないと染みになる!!
「悪い。手伝う」
ダッシュで雑巾を償還して二人で水拭きを頑張った。が、帳面だけは復元不可能だ。何を書こうとしたかも忘れちゃったし……
がっかりして濡れ縁に腰掛けた。すると藤堂さんも隣に掛けた。
「すまん、悪ふざけが過ぎた。帳面は新しいのを買ってやる」
と、水で濡らした手ぬぐいを渡してくれたので遠慮なく顔を拭いた。
「……って、よりによって何で今なんですか」
「そうだな。確かに考えなしだった」
藤堂さんはケロリとしていた。短気なところはあるけど、頭がよくて少し取っつきにくいくらいの人でこんな子どもじみた悪ふざけする人だと思わなかったから……こっちがびっくりだよっ!!
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