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「でも……隊服ってまだ新しいですよね?決めるときに意見を言わなかったんですか?」
「我々が口を出す余地はなかった。隊の立ち上げを後押ししてくださったお公家様があらかじめあつらえてくださったものでな。文句など言えんさ」
口には出さないが隊服が復元不可能になるのを密かに期待してるっぽい藤堂さん(笑)
藤堂さんは「そうだ」と懐から懐紙の包みを出した。中から茶色の艶やかな固まりが現れた。
「べっこう飴!」
「食うか」
暑さでくっついた欠片を剥がして口に放り込むと久々の甘味に心が穏やかになる。子どもだましで丸め込まれたようでやや悔しいが。
藤堂さんも懐紙から飴を摘まんで口に含んだ。小柄な割に豪快な人だが顔の造作は日本人形のように繊細だ。
大きな寺の宿坊という環境だから作法に厳しい人が多いのは当然なのだが、他のメンバーの所作がきびきびと直線的なのに対し、藤堂さんの食べる作法やふとした日常の仕草はどこか雅やかで細かな気遣いに満ちている。実はものすごく育ちのいい人なんじゃないかな。
「新」
口の中の飴を食べ終わった藤堂さんがまた話しかけてきた。
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