207人が本棚に入れています
本棚に追加
「はっ、はい」
「伊東さんが見込んだだけあってお前には剣の素質があるようだ。興味はないか」
「全くないわけでは……」
「稽古をつけてやろうか」
「本当ですか!お願いします」
……あれ?
「どうした。頭を打つのが恐いか」
「では、なくて……前にもこんな事かあったような」
「何か思い出したのか?」
「いえ。林五郎先生には書き留めるようにと帳面をもらったんですが……その時の光景や出来事は思い出せないんですが、感覚というか感情みたいな。それも嬉しいとか悲しいとかって強いものじゃなくて。あんまり言葉にできないような……錯覚かもしれないし」
「なるほど」
藤堂さんのお陰で貴重な1コがすっかり飛んじゃったし。
「辛いか」
「そうでもないです。なんか……、何にも覚えてなかった時はパニクってそれこそ頭真っ白で、今もすっぽり何かが抜けてて変な感じだけど」
でも、とりあえず今は一人っきりじゃない。居場所も仕事もある。
「ぱに……何?」
「あれ?『パニクる』って?どういう意味だろう……」
最初のコメントを投稿しよう!