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「あの、俺と一緒に助けられた人がいたと聞きましたがその人……」
「違う」
「えっ」
「その者は新とは偶然会って道中を共にしただけだそうだ」
「そうなんですか……でも、直接話したら何か思い出せるかもしれないし、あの、その人に会わせてもらえませんか」
「いいや。私の一存では会わせられん」
「そうなんですか。では、局長に」
「無理だ。そもそも岡……、その男は隊の重大な機密に関わっているため某所に隔離してある。私的な理由で会わせることはできん」
「……」
「すまんな」
「いえ」
もし何かを伏せられていたとしても、俺には肝心の記憶が無く暮らしていく術もない。ここに置いてもらえるだけでも十分だ。
「対面稽古は明日の昼過ぎでどうだ」
「はい!」
藤堂さんは「これを使え」と言って使い込んではあるがきちんと手入れのされた木刀を置いていってくれた。
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