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「原田さんは『そこまで堅苦しいんなら行かない』って言い出すし、山崎さんも『職務柄、往来で侍の姿はしたくない』って……山崎さんはともかく、原田さんは伊予松山でれっきとした藩士やってた人なのに……。困った人だよ。
この裃も沖田家に代々伝わる由緒ある物だって姉上が送ってよこしたんだ。浪士組として京行きが決まった時から持って行け、ってうるさくって。てっきり諦めてくれたとばかり思ってたんだけど……まさか後から送ってよこすなんて」
荷物を送る、と言ってもこの時代に宅配便サービスなんて物はもちろん、ない。一年に一度か二度、同郷だという近藤さん、土方さん、井上先生の親類の誰かが連絡役兼相談相手で様子を見に来てくれるんだそうだ。その時に頼んだのだろう。
「頼まれたる方だって大変なんだよ。まず同郷の近藤さんと宮川さん、土方さんと井上先生の家だろ。で、江戸の試衛館でも門下や他の隊士宛の物を色々預かるんだ。自分たちの旅支度もあるし文や書物だけでも結構な荷物なのにわざわざこんなかさばる物を頼んでよこすってさ……
うちは姉上がずっと女親代わりだったんだけど、女親の気遣いってほら、どこかズレてるだろ」
「あはは」
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