見えるけど、見えない。

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そう言えば、同じ病気の体験談を語る掲示板に 近所に住んでいるらしい女性がいた。 ハンドルネーム「おのプリン」さん。 年齢は非公開だから、もしかしたらうちの母親ぐらいの人かもしれないし もっと若い子かもしれない。 更に疑えば、実は男かもしれないし、書いている内容も 全部嘘かも知れない。 テキストでの語り口から、年齢は推測できない人だけど 何となく趣味が合う人で、会話し易い人であることは確かだった。 あの人なら、会ってくれるかもしれない。 この状況を脱する一助になるかもしれない。 俺に相手の姿は見えないし、おのプリンさんもまた 異性が見えない人だと告白していたから 相手からも俺の姿は見えないはずだ。 見えない者同士が、透明な空間に向かって語り合う。 目線を気にしなくていいし、 その不思議な光景は、俺と相手にしか共有できない世界だ。 きっと何かが生まれる。そう確信した俺は 「良かったら、今度どこかで会いませんか?」と打ったメールを作成し、 拒絶されたらどうしようという不安と、 これが恋に発展するかもしれないという期待で胸を膨らませながら 送信ボタンをクリックした。
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