第1章 口下手の正体

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「ねぇねぇ、君バンドって興味ある?」 あるわけねぇだろ、まぁ楽器屋で試奏してれば誤解されるのは当たり前か 僕は焦って「え、えっとおたくはどちらで?」 やべぇやらかした、ここで答えるべきなのはYES か NO 。何でこんなこと答えちまったんだよ 「あ、自己紹介が遅れてごめんね。都内の大学に通っている 相川結 (あいかわゆい)19歳、ベースやっているんだ、君は?」 ゆい?女の子っぽい名前だか間違えなく男だ、こりゃ失礼。少し緊張がほぐれたみたいでぼそっと無愛想に答えた 「大原 正樹、17歳、えっと高校3年生」 「そっかぁ若いね、今弾いてるそのギターでなんか弾いてみてよ」 「えー。ちょっと、それは、だって音楽の授業で少し弾いていただけですし…」 「いいからいいから!」 僕は手に持っていたギターで軽く最近CMタイアップで話題のあの曲を弾いて歌ってみた人前で歌うのは初めてだし、そもそもギターを弾きながら歌ったのも初めて きっとこういう押し付けがましいこの態度だからこの人もバンドマンだ、きっとそうだ なんか嫌気がさして、もう帰りますって言おうとした時 「よかったらうちのバンドのスタジオ練習みていく?この近くのスタジオだか ら」 「え、なにをいっているんですか?」 思わず口が開いてしまった、この口が開くと怒られたり何か反論されたり、下手なこと言ったりだから僕は自分のこの口が嫌いだ とりあえず謝らないと 「まあ、急に誘われても困るよね、邪魔して悪かったね、じゃあまた」 結さんは立ち去った、僕は店員さんに声をかけて試奏していたギターを預けた。 楽器屋なんて滅多に来るわけもないし、また会えるわけもないやん、やっぱバンドマンは 帰り道は電車に乗らず歩いて帰った。 僕なんかほんとはバンドマンになれない自分が悔しくて仕方がないのかもしれない、ギターを弾いているだけなら弾き語りでもいいはずだ、もちろんそんなのには興味ないのだけど 気づいたら夕焼けは沈んでいた、今日はやけに疲れた、やっぱり僕にはあんな派手な輩とは釣り合わない、もう勘弁だ、こんな性格の僕が人と関わるとろくなことがない、もう楽器屋には行きたくないな 「はぁ、やっぱり僕には無理だ」 ため息を吐き出して、今日は何にも食べずに布団に入った
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