第1章 口下手の正体

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昨夜もツリキャスの配信を聴いていた、高校3年生で趣味のない僕でも放送のある日は毎晩聴いている。 今朝も寝坊だ。朝食を食べる時間もなかったので急いで駅へ向かった。 情けない、情けない、こんなんじゃダメだ 学校に行けば今頃朝のホームルーム前に同じクラスの子は今頃進路指導室で進学や就職の準備をしている。 そんなこと考えながら 「とりあえず都内で進学できたらいいかなぁ」 意欲がないというわけではないが、僕には夢がない 昔続けていた陸上もうまくいかなかったし、もともと人付き合いが上手いわけでもないから新しく何かを始める気にもなれない、勿論ギターもそんなに上手いわけではないし歌も上手いわけではない とりあえず人並みに勉強して、いい大学に進学して、人並みに就職してそういうのがいいのかなとたまに考える 朝のホームルームにはギリギリ間に合った、自分の机の近くにはいつもクラスの人気の連中が集まって談笑していた、そして僕が来たのを悟ったのか元いた席に戻っていった 何か起きるように期待して、なにも起きない日常を悔しがった 今日も授業のほとんどを寝て過ごした、ノートを取るためだけに顔を上げて、 あとはそんな現実から顔を伏せるためだけに顔を伏せて眠った こんな夢のない僕をみて父親は「もうすぐ成人なのだから遊んでばかりいないでしっかりしろ」と言う、先生は「何か1つやりたいことを見つけて好きなことをやれ」という、数少ない友達は「お前はまだ進学先とか決めてないの?やばいよ?もう半年しかないのだよ?」 わかっているよ、けど僕はこのままでいいや 今日はゲーセンに行くために帰りは途中の駅で降りた。携帯ゲームとか家庭用ゲーム機は高いからっていうのもあってゲームセンターをよく利用している パチンコ中毒になった人の如く、僕は店に唯一2台あるリズムゲームにのめり込んだ。 なんどもなんども流れてくるマークをリズムよくタップして日々のどうしようもない感情のはけ口にした 気づいたらスマホの時計は23時を過ぎていた 帰りの電車で揺られて自分の家の 最寄り駅についた 電車のドアを抜けて改札に向けて歩いているとホームの北側の端に1人の男性が電車がもう過ぎた空っぽのホームを前に立ち尽くしているではないか 嫌な予感がする ♪ 「間も無く急行電車が参ります~危ないですから黄色い…」 男性はホームに飛び込んだ
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