第1章 口下手の正体

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「え、僕なんかとですか?」 「そう、初めてギターを弾いているのを楽器屋で見た時、なんか楽しそうに弾いてたからそれもあるし」 僕は頭を掻きながら言った 「全然曲とか作っとかないし、そもそも人前苦手な僕がギター弾きながら歌えると思いますか? カラオケとかも一度も行った時ないんですよ」 「これからやればいいよ、作詞作曲もギターもカラオケも」 否定する言葉が見当たらない、僕は頭の中で必死に言葉を探した 「だって僕にはやりたいことがないんですよ、そもそも目標見つけても達成できるかわかんないし」 結さんがすこし険しい顔をした バックの中から紙を取り出した それを結さんは僕に渡した 「ふじさんろっくふぇすてぃばる?」 結さんの顔が少しにこやかになった 「そうそう、ロックバンドの中でも結構大きなイベントで、君の好きな〇〇ってバンドも出るんだって、目指してみない?」 少しふてくされて僕が言った 「結さんらやっているバンドはどうするんですか?メンバーもそもそも集まってないのにどうするのですか?」 結さんがいつも以上に笑った顔で言った 「これからゆっくり集めていけばいいよ、焦る必要なんてないし、完成形。完成 形を大事にしよう」 いつもはどうしようもなく嫌いになってたバンドマンが少しだけ信じられるようになってた 警察の人が痺れを切らして声をかけて来た 「ちょっと君たち、早く帰らないとだからそろそろ終わりにしてね。大原くんだっけ?送っていくから駅の東口の駐車場にいってるから声かけてね」 結さん「怒られちゃったね、じゃあ電話かメール交換しようか?連絡先交換できる?」 この日、親と先生と中学の数少ない友達の他に久々に電話帳の連絡先の文字が増えた。パトカーの中で携帯の連絡先の画面の何回も開いたら閉じたりしていた。 やっとだ、やっと始まるんだ。今本当にやりたいことかどうかはわからないんだけどちょっとでもやりたいことが見つかって、自分の本当の気持ちを受け止めてくれる人が増えた とりあえず今やることはバイトすること、コンビニでも飲食でもいい、バイトしてギター買うんだ。高いのは無理だけどなるべく迷惑かけないように少し高いギター買うんだ バイト応募サイトを何件も開いてバイトを何件も申し込んだ 気づいたら朝になってた 今日は早めに電車に乗ろう いってきます
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