34人が本棚に入れています
本棚に追加
「こんな感じでいいですか?」
「もう少し襟足を短くお願いします」
僕は床屋に来ている、土曜日の朝一だ。
やっぱり朝が弱いけど、もちろんツリキャスのせいじゃない、最近バイトを始めたのだ
もともと学校終わったらゲームセンターに行くか家に帰って録画していたアニメを見るのが日課だった僕にとっては大きな変化だ
それよりも大きな変化はギター経験もそんなにない僕がバンドに誘われ、この後も結先輩の家にギターを練習しに行くのだ
学校ではいつも通りに振舞って、放課後や土日は別の人格で振る舞う、正直最近ストレスがすごい。
襟足がだんだん短くなって来た
「はい、終わり。お疲れ様。」
そんな最近の事を考えていたら気づいたら終わっていた
「ありがとうございました」
そう言って店を出て、メールで教えてもらった先輩の住所を携帯で探して歩き始めた。
どうやらここから歩いて300mくらいのところにあるみたい
バンドをやっているなんて友達にバレたらどう思われるだろうか。「すごいね」「頑張ってるね」「応援してるよ」そう言ってくれる人がいくらいるだろうか?
バンドをやっている人を一歩引いて見てしまう人間はきっと少なくない。中学や高校の友達に見つからないように周りに気を配りながら、狭い住宅街を行ったり来たりした。
「えっと、あいかわっ……と、この辺だよな?…」
「あ、見つけた」
白壁の小さな2階建ての一軒家に表札の”相川”の文字。僕の家はマンションだったので少しだけびっくりした。
インターホンを押したらすぐに先輩は降りて来た
「お疲れ様~迷ったでしょ?どうぞ上がって」
迷ってねえ、と心の中では少し強がっていたが何も言わず2階の結さんの部屋に入って行った
それから2時間くらいギターを弾いて、ノートを開いて音楽理論の勉強をした。なにかをずっと続けることが苦手な僕にとってはすごい苦痛なことだった。こういうのが楽しいって思えるほど本気にはまだならないのかもしれない
そんな僕の顔色を悟ったのか結さんが
「疲れたよね?そろそろ休む?下から甘いもの持ってくるからしばらくその辺でゆっくりしてて」
先輩は部屋を出て行った
こういう時に人の部屋の中をジロジロと見るのは悪いことだが、つい色々と見入ってしまった
ガタン
物音がした
最初のコメントを投稿しよう!