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ガタン
物音がした
本棚から写真立てがおちた音だ
「これは…先輩?」
写真に写っているのはアコースティックギターで弾き語りをしている結さんの姿だ、少し若い。
階段を上がって来る音がした
僕は急いで本棚に写真立てを戻した
「お疲れ~待たせた?」
「いやいや、待ってないですよ、そういや先輩に聞きたいことが1つあって…」
結さんは不思議な顔をした
「ん?」
「どうしてベーシストなのにそんなギターとかギターボーカルにこだわるのですか?そうじゃないとこんな真剣に赤の他人に教えてくれないし」
「赤の他人なんかじゃないよ、もしかしてだけど…」
その場の空気が止まった
「…みた?写真立て」
度肝を突かれた
「いやいやいやいや、なんというかなんというか、ベースもできて、ギターもできるなんてすごいじゃないですか!ベーシストの部屋なのにアコギとエレキがあるなんてやっぱりなんかすごい人なのかなって」
焦ってちゃんとした言葉が出てこなかった
「見てたね、まあいいよ。隠しておくつもりはなかったし。昔弾き語りやっていたのだよ、その繋がりで友達4人と集まってバンドを組んでたんだよ」
「なんで辞めちゃったのですか?」
「なんでというかなんというか、機材泥棒って言葉わかる?」
「機材ってギターだけじゃないのですか?」
「いやいや、バンドにはギターの他に、シールド、エフェクター、マイクとかなんかも機材で、リハーサルが終わったら楽屋に荷物を置いておくのね」
「はい、そこでですか?」
「うん、その時のベースが使っていたエフェクターが盗まれて、5万くらいするほんとに高いのだったのだ、ライブが終わった後他のバンドのやつが盗んだってことに気づいて、ベースのやつの怒りが止まらなくて、ライブハウスを信用できなくなったんだろうね、辞めちゃったよそいつは」
「でも他のメンバーは?」
「他のメンバーもその流れで全員、その時思ったんだ。ギターボーカルで作詞作曲をやってた俺はバンドの中のリーダーにならなきゃいけない。なにか問題があったらそれを解決して運営して行くのがフロントマン、リーダーとしてその責任を果たせなかった、だからギターボーカルはやめたんだ」
写真立てに写っていた結さんの姿はすごく楽しそうだったのに、今の結さんは何か心の中に尖ったものを隠していそうで怖かった
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