ざわめく心ー1

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その日、私は定例セミナーに出席するため、皆川さんの会社を訪れていた。 少し駅から離れた場所にあるうちの社と違い、皆川さんの社は賑やかな目抜通り沿いにある。 クリスマスが近い街路のショーウィンドーはツリーやリースで飾られていた。 今はまだ西日を浴びている街路樹は、夜になるとイルミネーションが灯され、いっそう華やかになる。 コートを脱いで会場の席に落ち着くと、私は周囲を見回した。 受付にもホール内にも皆川さんの姿は見えない。 いつもはぎりぎりに滑り込むのに、今日は早く来すぎたのかもしれない。 受付一番乗りに近かったので、自分の張り切りが少し恥ずかしくなった。
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