ざわめく心ー1

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壇上では自己紹介からセミナーの導入部分が始まったので、気持ちを切り替えて講演に集中する。 今日の講演者は大手化粧品メーカーで開発チーフを務める女性だった。 私より少し年上なだけなのに、華々しい実績を積んでいるらしい。 それでいて、女らしい色香も漂っているのが遠目でもわかる。 同じ三十年程度の人生でどうしてこうも差が出るのだろう? 数年後に私があんな風になれるとは、とても思えない。 最近の私は近視眼で、堀内嬢のことばかり意識していたけれど、あれはかなり低レベルな争いだったんだなと自覚する。 溜め息をついて手元の紙に視線を戻したその時、私の呼吸が一瞬止まった。 “仁科香子” 手元資料の講演者名にそう書いてあったのだ。 再び視線を前方に移す。
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