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彼との接点がないまま数日が過ぎ、“それっきり”が確定するにつれ、私は断ったことを日増しに激しく後悔し始めた。
たった一週間をここまで長く感じたことはない。
でも、当日を迎える頃には諦めの境地で腹を括り、お役目にふさわしいよう、それなりにお洒落をして臨んだ。
「ねぇナツ。迫田に合わせてよ?ナツに猛攻かける演技してくれる予定だから」
「わかってるよ」
茉由子と通用口で落ち合うと、はしゃぐ茉由子に生返事を返しながら約束に向かう。
電車に揺られながらまた考えた。
今年も残すところあと数日だ。
もう皆川さんに年内は会えないのかな……。
ぼんやりと吊り革に掴まりながら、いつも以上に短く、変換や改行も所々ずさんだったあの時の彼のメールを思い浮かべる。
返事もなかったし、きっと誰かの接待に出かけたりして、携帯をいじる状況になかったのだろう。
相手は敢えて“誰か”という言葉に置き換えて、私はそんな風に自らを慰めた。
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