ざわめく心ー1

7/21
前へ
/21ページ
次へ
「男は単純ですから、自分に守らせてくれそうな相手に行動を起こします。隙にも色々あって、これは正しい隙」 考えこんでいた私は、彼の嫌味攻撃の気配に気づいて身構えた。 「泥酔してストリップを始めるのは悪い隙の最たる例ですね」 「……言われると思いました」 「個人的にはオツでしたよ」 「ほんと、しつこい」 彼は笑うと、立ち上がった。 「さてと、送ります」 「えっ、今何時……?うわっ、すみません!」 時刻は一時をとうに過ぎていた。 企画書に没頭しすぎて時間を忘れていたのだ。 「でも、あの……いつも徹夜してたのに、この時間に仕上がっているのは奇跡です。助言のおかげです。ありがとうございました」 彼の背中に深々と頭を下げた。 「いいえ、またどうぞ」 こんな風に、私たちはいつも健全に終わる。 歯止めをかけるのは彼だった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1646人が本棚に入れています
本棚に追加