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皆川さんは私の手を掴んだまま通路を進んでいき、とうとう店の外へ出てしまった。
「……さて」
彼は店の脇の狭く暗い通路に私を押し込むと、腕組みをした。
寒さのせいか、それとも皆川さんに圧倒されているせいか、身体が一回り以上縮んだ気がする。
「あれはどういう状況ですか?東条主任からターゲットを変えたなら、僕はもう不要ということになりますが」
「違います、違います!」
両手を振って必死に否定した。
考えてみたら偽の恋人役は迫田くんでもいいはずなのに、どうして私は必死になるんだろう。
「あの、友達を意中の人とくっつけようとしてまして……」
「最初あなたが鼻の下を伸ばしていたイケメンがそれですか」
「……はい」
いつから見られていたのだろう。
決まりの悪さから、私はくどくどと言い訳を始めた。
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