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「とりあえず生でいい?」
四人で簡単に自己紹介をしたあと、迫田君が手を上げて店員に合図した。
ビールより焼酎党のくせに、猫かぶり中の茉由子はにっこりとうなずくだけだ。
茉由子を引き立てなければならない私がここで一人だけ“ウーロン茶”とは言いにくい。
ちょっと舐めるぐらいならいいよねと、早くも私は禁酒令を破ってしまった。
「ふぅ……」
一ヶ月ぶりのビールの泡をしみじみ味わっていると、茉由子の意中の人、内山さんが私に話しかけてきた。
「迫田と会うのは二度目?」
彼はこの食事会の目的が迫田君と私を結びつけるものと聞かされているので、仲を取り持たねばと思ったらしい。
寡黙で少し近づきがたい印象だけど、話し始めるととても優しそうな目になる。
笑顔がどことなく寂しげで、胸がきゅんとなる感じだ。
「えっ、は、はい!」
東条主任以外のイケメンと喋る機会が滅多にないので、緊張して声が上ずってしまった。
皆川さんの存在は敢えて意識の外に押しやった。
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