ざわめく心-2

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「スコーピオンあたりか」 「スコーピオン……蠍?」 普通のモードに戻っていく彼についていかなければと、まだ恍惚としている頭を必死に働かせる。 でも、会話よりキスしていたかった。 「あなたが勧められたカクテルの名前です。口当たりはいいですが、かなりきつい酒のはずですよ」 彼は苦々しげな表情を浮かべた。 「今日はもう絶対に飲まないで下さい。いや、今日だけでなく」 私をきちんと立たせながら、彼は少し厳しい声で言った。 「ちゃんと相手を選んで」 険しい顔なのに、見上げる私の身体は熱くなる。 でも彼は私の背中に手を添えて大通りの方に促した。 「戻りましょうか。寒いでしょう」 「……はい」 賑やかな大通りに出ると、路地裏で交わしたキスが夢の中の出来事のように感じられた。 それでも私の唇は焼き印を押されたように疼いている。
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