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「帰ったら僕にメールを入れて。二次会、寄り道禁止で」
まるで本物の彼氏のような言葉を残して個室席の方へ去っていく彼を見送る。
もう彼には嘘をついてもばれる気しかしない。
私が店を出てからメールが届くまでの時間を自宅までの所要時間と照らし合わせたりとか。
何よ、指図ばっかりして、自分はあっさり席に帰っちゃうんじゃない……。
でも、腹を立てようと思っても、そんな気持ちになれない。
むしろ今まで男性に愛されたことも嫉妬されたこともない私は、束縛に似た台詞を嬉しく思ってしまった。
駄目だよ。
指導対象として言われただけで、女として言われたんじゃないんだから。
火照るほっぺたをかじかんだ両手で挟んで冷ます。
なのに、どれだけ押さえつけても、恋愛経験が少ない私は彼の一言一言で蝶々のようにふわふわと浮わついてしまう。
情けないけれど、どうしようもなかった。
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