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「いい奴だよ。チャラく見えるけど意外と真面目だし」
「チャラいは余計っす」
「いや、チャラいでしょ」
茉由子がうっかり猫かぶりを忘れて突っ込むと、内山さんが笑った。
茉由子はそのまま迫田くんと漫才のような掛け合いを始めて、内山さんは笑いながらビールを飲んでいる。
私もちびちびと泡を舐めた。
そのうち舐めるだけでは足らなくなり、一口ぐびりと飲んだ。
イケメンの笑顔という酒の肴のせいか、やけに美味しく染みわたる。
だけど、もう一口、もう一口と飲んでしまう度に、皆川さんの顔がちらついてビールの味の邪魔をしてくる。
姿はなくとも、彼は私に洗脳に近い強力な支配力をふるうらしい。
やっぱり我慢しよう……。
バレるはずはないのに、ついに私は渋々ジョッキをテーブルに置いた。
もう、次の約束はないかもしれないじゃん。
あと一ヶ月でいなくなるし、きっと契約は事実上終わっちゃったんだよ。
言い付けを守っても誉めてくれないよ……。
ふと顔を上げると、内山さんと目が合った。
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