ざわめく心-2

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「課長クラスの募集だし地元出身者優先だから、無謀な挑戦なんだけどね。でも、行くからには地域固定社員になる覚悟だよ」 「どうして広島に?」 「うーん……。たぶん、俺にとって一番綺麗な場所だからかな」 内山さんは少し考えたあと、とびきり優しい、それでいて少し切ないような表情を浮かべた。 「どれだけ遠くを巡っても回帰してしまう場所っていうのかな。それが分かったから」 何だか哲学のようであまりピンと来なかったけれど、茉由子の友人はオツムが弱いと思われるといけないので、分かってる風にうなずてみせた。 「いい所ですよね、広島。お好み焼きなら断然ソバ入りの広島派です。……あ、関西の方なのにすみません」 何かツボだったのか、それとも失笑なのか、内山さんが笑い出したので、つられて私も笑った。 「いいよね、江藤さん。なんだか和むよ」 微妙な誉め言葉ながら照れてしまい、赤い顔でビールをぐいと飲む。 でも、この時の私はこの何気ない会話を後から思い出し、自分を重ねて苦しむことになるとは想像もしていなかった。
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