ざわめく心-2

6/25
前へ
/25ページ
次へ
「栃木だと宇都宮線?通うの大変じゃないの?」 「そうなんです。大学は片道二時間かかってしんどかったから、社会人になってからは一人暮しです」 私が喋っている間、途中から何か言いたげな顔をしていた内山さんは、自分の口の端をチョンチョンと軽くつついてみせた。 「ついてるよ、ここ」 「ん?……あっ、やだっ、すみません!」 ビールの泡がついているとこっそり小声で教えてくれたのに、私は大失態に焦って大声で謝ってしまった。 「やーだ、ナツったら」 「いやいや、こういう所がいいんすよ!」 突如ミッションを思い出したらしい迫田くんのスイッチが入り、茉由子との会話を放り出して強引に割り込んできた。 「なっちゃんて呼んでいい?」 「あ、はぁ、うん」 いよいよ“迫田君の熱烈アプローチにまんざらでもない私”の演技開始なのか。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1542人が本棚に入れています
本棚に追加