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「栃木だと宇都宮線?通うの大変じゃないの?」
「そうなんです。大学は片道二時間かかってしんどかったから、社会人になってからは一人暮しです」
私が喋っている間、途中から何か言いたげな顔をしていた内山さんは、自分の口の端をチョンチョンと軽くつついてみせた。
「ついてるよ、ここ」
「ん?……あっ、やだっ、すみません!」
ビールの泡がついているとこっそり小声で教えてくれたのに、私は大失態に焦って大声で謝ってしまった。
「やーだ、ナツったら」
「いやいや、こういう所がいいんすよ!」
突如ミッションを思い出したらしい迫田くんのスイッチが入り、茉由子との会話を放り出して強引に割り込んできた。
「なっちゃんて呼んでいい?」
「あ、はぁ、うん」
いよいよ“迫田君の熱烈アプローチにまんざらでもない私”の演技開始なのか。
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