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結局、私の声は迫田くんの大声にかき消され、私の前にはウーロン茶の代わりに彼のイチオシだという名前のよく分からないカクテルがドンと置かれることになった。
禁酒令を破ること二杯目。
これ以上はダメだ。
じっと眺めて耐えていた私はグラスの縁に飾られたオレンジをしゃぶり、お預け状態を慰めた。
「それ美味いぞ。……あれっ、飲んでないじゃん。不味かった?」
「ううん、すごく美味しいよ!」
皆川さん許して下さいと心の中で叫びながら、慌てて口をつける。
実際、カクテルはジュースみたいでとても美味しかった。
皆川さんの禁酒令がなければ軽く飲み干してしまっただろう。
もう一口いいかなと迷ったところで、ふと視線を感じた気がした。
顔を上げ周囲を見回したけれど、見た限り知り合いらしき姿はない。
気のせいかと姿勢を元に戻しかけた時、迫田くんが手招きをして顔を近づけてきた。
「なぁなぁ、なっちゃん。顔こっち」
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