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「なに?」
何かの密談かと思い、私も顔を近づけた。
すると迫田くんはさらに顔を寄せ、隣の二人に聞こえないように小声でささやいた。
「こうやってるといい感じに見えるだろ?そしたら必然的に河北が内山先輩とツーショットになるじゃん」
そう言いながら迫田くんは私の手を引っ張ってテーブルの奥に寄った。
「……にしてもちょっと近すぎない?」
「このぐらいやらないとダメなんだよ。先輩はあんま女と飲みたがらないから、こっちに入って来れない雰囲気作らなきゃ」
茉由子を見ると、チャンスだと理解したのか、熱心に内山さんに何やら喋り始めていて、内山さんも真面目な顔でうなずきながら聞いている。
なかなかいい感じだ。
「だから個室にしなかったんだよ。個室だと四人ベッタリだろ?」
「なるほど」
息の合わない会話を延々繰り広げて失敗するより、ヒソヒソやるだけの方が手軽でいい。
二人とも自分のグラスを移動させて、しっぽりと飲んでいる風に落ち着いた。
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