恋か、忠誠か-2

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ところがそんな感傷的な物思いに耽っていた私は、彼が五分に一回は嫌味を吐く性分であることをうっかり忘れていた。 「ま、良かったですね。男と酒を飲む余裕もできたようで何よりです」 「え?いやいや、あれは不可抗力で」 マグを置き全力の身ぶり手振りで言い訳をする私を見て、皆川さんは甚だ気にくわないといった顔つきで脚を組んだ。 「スコーピオンはあなたがバーであおっていた酒ですよ」 「えっ?」 そこで夕飯が届いたことを知らせるインターホンが鳴り、彼は「早いな」と呟いて立ち上がった。 「たった三杯であなたが何をやらかしたかはもう言わずにおきますが」 おまけの嫌味を残して彼が出ていったリビングのドアを無言で見送る。 カクテル名も何杯飲んだかも、いちいち全部覚えているなんて。 そんなこと知ってしまったら、余計に期待してのめりこんでしまうじゃない。 もうすぐ全部片付けて、去ってしまうくせに……。
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