恋か、忠誠か-2

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その時、課長が声を上げた。 「ああ、この記事だ。ほら、茨城だろ?」 私も立ち上がり、課長が検索した記事を主任と二人で覗き込む。 「本当ですね」 「たしか前も何かリークされたの、この新聞社だったんだよな」 私と課長が喋る横で、主任は複雑な表情でじっと画面を見つめて黙りこんでいるだけだった。 その様子が妙に引っ掛かり、その日はずっともやもやしていた。 仕事の話や帰宅時間をやたらに詳しく尋ねてきた堀内さん。 何度もしつこく極秘資料の扱いを注意する皆川さん。 堀内さんや皆川さんと過去に交わした会話を思い起こし、繋ぎ合わせると、ある疑念に行き着いてしまうのだ。 でもすぐに「まさかね」と打ち消し、目を逸らした。 そんなこと、身近で起こって欲しくない。 そして、皆川さんの目的を確信してしまうのが怖かった。
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