1590人が本棚に入れています
本棚に追加
会いたくて仕方ないのに、会うのが怖い。
そんな気分で迎えた当日は、仕事初めから数えて初の週末、金曜日だった。
年が明けたばかりということもあり、職場はまだエンジンが全開になりきらない緩い空気が漂っていて、新年会を兼ねたお誘いが飛び交っている。
恐縮ながらこれでも一応紅一点なので、私にもいくつかのお誘いがかかる。
でも、今はまだ禁酒中だ。
何より今日の約束は、私にとって絶対だった。
丁重に断っていると、「おっ、江藤ちゃん、さては彼氏できたな!」なんてからかいも飛んできた。
「えー、違いますよ」
いつも通りの返答が口をついて出てしまうのは、長年の習慣だから仕方がない。
「いやいや、今日は珍しくスカートだしさ」
「私だってたまにはスカートぐらい穿きますよ」
「色気出してしっかり捕まえとけよー」
セクハラ気味ながら、当たらずとも遠からず。
私は皆川さんに何をどこまで望んでいるのだろう?
そんなことを考えつつ逃げるタイミングを見計らっていると、東条主任と目が合った。
最初のコメントを投稿しよう!