恋か、忠誠か-2

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会いたくて仕方ないのに、会うのが怖い。 そんな気分で迎えた当日は、仕事初めから数えて初の週末、金曜日だった。 年が明けたばかりということもあり、職場はまだエンジンが全開になりきらない緩い空気が漂っていて、新年会を兼ねたお誘いが飛び交っている。 恐縮ながらこれでも一応紅一点なので、私にもいくつかのお誘いがかかる。 でも、今はまだ禁酒中だ。 何より今日の約束は、私にとって絶対だった。 丁重に断っていると、「おっ、江藤ちゃん、さては彼氏できたな!」なんてからかいも飛んできた。 「えー、違いますよ」 いつも通りの返答が口をついて出てしまうのは、長年の習慣だから仕方がない。 「いやいや、今日は珍しくスカートだしさ」 「私だってたまにはスカートぐらい穿きますよ」 「色気出してしっかり捕まえとけよー」 セクハラ気味ながら、当たらずとも遠からず。 私は皆川さんに何をどこまで望んでいるのだろう? そんなことを考えつつ逃げるタイミングを見計らっていると、東条主任と目が合った。
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