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「痛っ……」
疲れて前方不注意になっていた私は路面の段差で躓いた。
そこでとうとう、私の足が止まってしまった。
もう、帰ろう。
十分頑張ったじゃない……。
涙を流す気力もなくよろよろと壁に寄りかかり、夜空を見上げた。
そういえばあの夜も、カップルにぶつかって靴が脱げたんだっけ。
みじめだなと笑い、目の前の風景を改めて眺めた私は、あの時に眺めたものとそれが似ていることに気づいた。
一瞬にして疲れも絶望も忘れ、壁から身を起こす。
この壁、この路地、夜空にそびえる都庁の角度。
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