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“男は意固地でグズで頭が固い”だったっけ?
そうだ、彼とこうして抱き合えるなら、答えなんて聞かなくて構わない。
そう納得して彼の首に腕を回して抱きついた時、私の耳に思いがけない一言がささやかれた。
「好きですよ」
生まれて初めて、大好きな人からもらった言葉。
胸がいっぱいで何も言えない。
「好きです」
一度目よりも優しく深いささやき声が私の首筋を震わせる。
「他の男に委ねたことを後悔しました」
「……う」
私が発することができたのは、あまりに可愛くない嗚咽のうめき声だった。
「奈都」
暗がりでキスを受けながら彼に呼ばれた名前は、世界で一番特別な名前に聞こえた。
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