もう一度、あなたに逢えたらー1

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たった四文字の名前。 なのに今の私はそれさえも飢えていて、見ただけで涙が滲んでくる。 私も迂闊なもので、繋がりをすべて断ち切ったつもりになっていたけれど、名刺をうっかりしていたのだ。 でも今はそれが頼みの綱だった。 時計を見ると、時刻は十時を過ぎている。 それを見て、途端に私の勢いが再び消沈していった。 いくら取引先を装っても、この時間に電話するのはいかがなものか。 他の社員が出たら、絶対に怪しく思われるだろう。 それに、彼が出たとしても、仕事中の彼に何と言えばいいのだろう。 しかも、こんな用件で……。
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