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「東条主任のことはもういいんですか?」
「主任への気持ちはずいぶん前に憧れに近いものだったと気づきました。でも皆川さんにそれを言えずにいました。一緒に居られなくなると思って……」
髪を撫でていた手が肩に下りたかと思うと、ベッドにゆっくりと倒された。
「まったく……ずいぶん我慢したのに」
本気で服を脱がせ始める彼の手を押しとどめ、私はぎゅっと目を瞑り、どうしても気になるあのことを思いきって叫んだ。
連綿と十五年も続いた恋人の存在。
皆川さんが「お一人」なのか、そこがまだはっきりしていない。
「あのっ、その前に、香子さんとはどうなったんですか?」
広がる沈黙と完全に止まってしまった彼の手に、土壇場でしくじってしまったのかと思い泣きたくなった時、ようやく彼が口を開いた。
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