双子の慈善家

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双子の慈善家

 あるところに双子がいた。双子は共に慈善家であったので、よく募金を求めていた。  ひとりは募金に自分の給料を足して恵まれない人たちへ施しをしていた。もうひとりは募金を仕事にして、募金から自分の給料を払っていた。  やがて募金を求めている双子が良い暮らしをしていると言うので、詐欺師として告発された。  ひとりは立派でひとりはみすぼらしかったが、そっくりだったので二人とも告発された。ところが、裁判に施しを受けたという人が現れ、証言したので二人とも無罪となった。  その後も二人は施しを続けたのでひとりはますます裕福に、もうひとりはますますみすぼらしくなった。  やがて世間の人たちから、ひとりは善人と呼ばれ、ひとりは偽善者と呼ばれるようになった。  いつしか二人にも死の瞬間が訪れる。そこで神様が二人にこう言った。「死に際し望む事はないか?」偽善者はこう言った「わたしは善行を重ねました、天国へ行く権利がある筈です」善人はこう言う。「わたしは人々が心配なので地上に残りたい」と。  神様は二人の願いを聞き届け、偽善者を天国へ善人を地上に残した。  やがて善人は人々が立てたみすぼらしい銅像へと宿り。人々の暮らしを見守り続けた。  天国へ昇った偽善者は幸せだったが、天国は善人の集まる所、あまりにも場違いな偽善者は天国が居辛くなってしまった。なので神様に再びお願いして、地上へと戻してもらい。偽善者の会社が作った立派な銅像へと宿る事にした。  こうして地上には双子の慈善家の銅像がある。みすぼらしくも人々から慕われる善人の銅像と 立派だが誰も見向きもしない偽善者の銅像が並んで立っている。
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