続 夏訪れるもの

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続 夏訪れるもの

 私と母との思い出は、何もかにも溶けてしまいそうな夏の日が多かった。父は働いてばかりで、それでも母と私の為に一所懸命だった。  そんな二人も、今では同じお墓の中。今年もお墓参りの時期が来て、母と参った思い出が私の記憶にやって来る。  墓地(ここ)へ来ると思い出す、見知らぬ名前の古い墓。何故か母は手を合わせ、少し涙を滲ませた。  不思議な顔をする私に、母は「昔御世話になった人よ」と言ったっけ。もう夏なんて来なければいいのにと、ぶうたれる私にアイスを買ってくれた母。 さぁ今年も遣ってきましたよ。私の知らない墓の人。
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