掌作品集

振り返るな

「振り返ってはいけない」そう誰かが囁いた気がした。
でも、僕を呼ぶ懐かしい声を確かめたくて後ろを見た。
そこには、友が笑い両親は微笑んで、兄妹は楽しげに踊っている。
なにより愛しい君の息づかいと肌のぬくもりがそこにはあった。
僕は嬉しくて、頭にあてた鉄の塊の引き金に力を込めた。