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そして、神は降臨する
わたしは殺された。
昨夜だ。
たぶん、その男は狂っていたんだと思う。
この星で生きる、すべての人の記憶が毎朝、ランダムに書きかえられるようになってから四年。
惑星の全人類が、朝七時二十三分になると、他人の体から他人の体へ、心を移しかえられる。
暴走した機械の神によって。
そんな日々に耐えられる人は少ない。
多くの人が危険にさらされ、逃げまどい、泣きわめきながら暮らしている。
だから、あの男は正気をたもてなかったのだろう。
昨日のシャッフルのあと、わたしを見たとたんに叫び、追いまわしてきた。
災難なことに、そのとき入っていた、わたしのボディーは老婆だった。屈強な男に首をしめられ、あっけなく死んだ。
しかしーー
それなら、これは、どういうことだろう?
死んだはずのわたしが、今朝、目覚めると、ふたたび意識を持っていた。
あたりは暗闇。
広い建物の地下のようだ。
おそらくは病院だろう。
わたしは自分の体を見おろし、ぞッとした。
死体だ。死斑が浮いて、くさりかけている。
なんで、こんなことになったのだろう?
わたしは、死体のなかにシャッフルされてしまった。
わたしが昨日、死んだからだろうか?
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