そして、神は降臨する

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ガッカリした。が、よく考えたら、それは喜ぶべきことかもしれない。 わたしの体は、まだ生きているーーということなのだから。 そこには死体しかないようだ。 わたしは、その部屋を出ようとした。 そのとき、また、あの音を聞いた。 タタタ。タタタ……。 わたしは、ドアのすきまから、廊下をのぞいた。 非常灯の緑のランプだけが光る暗がりのなか。 何かが、よぎった。 人影のようだ。 人としたら、そうとうに大きい。 身長は二メートルをこえているだろう。 それに……なんだろうか? いやに、腕が長かったが。 わたしは影が遠のくまで、じっとしていた。 なぜだか、わからないが、あれは、わたしを探しているような気がしてならない。 しばらく、ようすを見て、廊下に出た。 となりのドアもカードキーで、ひらいた。 ただの物置だ。液体化した肥料を入れた缶が、ならんでいる。 そのとなりも。そのまた、となりも。 ここには、役に立つものはない。 やはり、早く地下をぬけだし、外に出るべきだ。 わたしは急いでいた。 ついに、階段を見つけた。 あそこだ! あの階段をあがれば、きっと出口が見つかる。 それが、油断に、つながった。 タタターーと、背後に、あの音を聞いた。 わたしは瞬間的に身をふせた。 空を切る風圧が、もろに、わたしの顔をたたく。     
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