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わたしは恐怖で身動きができない。
アイツは今、どこにいるだろうか。
わたしを探して、あの死体置場のプールまで行ったのだろうか?
そもそも、なんで、わたしだけが、こんなことに。
何度も、何度も、死体のなかに、よみがえる?
これも、アマテラスの仕業なのか?
わたしは、もう疲れはてていた。
泣きたかった。
こんな悪夢から、一刻も早く、さめたい。
誰か、助けてくれ。
われらの敬愛する月の神よ。
オシリス。
あなたが死にさえしなければ、こんなことにはならなかった。もう一度、あなたの民を救ってくれ。
数年前まで、わたしたちは幸せだった。
わたしと、わたしの愛する妻は死にかけていたところを、オシリスに救われた。
オシリスは安全な寝床と、多くの知識と、気のあう仕事仲間をくれた。
このまま、幸福に最後の日を迎えることができたなら……。
それだけが、わたしの、ささやかな願いだった。
なのに、なぜ、こんなことにーー
ドアの向こうで、とつぜん、声がした。
「ピーター。ひさしぶりね」
それは、コンピューターの作る電子音だ。
アイツだ。アイツが、ドアの外に立っている。
「……アマテラス、か?」
わたしの声は、やはり、くぐもっていた。
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