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でも、それなら、わたし以外の人たちも、目覚めていなければならない。
だって、ここは、モルグだ。
ホルマリンのプールのなかに、死体が、ごろごろ、ころがっている。
わたしのように意識を持って、動きだす死体は、ほかにはないようだ。
わたしは違和感を感じた。
あるいは、この現象、わたしにだけ起こったことなのかもしれない。バグ的な何かだろうか?
これまで、通説では、シャッフル中に死んだ人の記憶は、二度と再生されないという話だった。
つまり、たとえ死んだのが他人のボディーでも、その瞬間に記憶の再生権を失う。精神も殺されるのだと。
でも、今、わたしに起きている、この現象は、通説とは違う。
わたしはホルマリンのプールを泳いで、ゆかへと、はいあがった。
こんな、くさった死体になってしまって、どうしたらいいのか。途方にくれる。
だが、希望がないわけではない。
今朝、この現象が起きたということは、明日また、わたしにはシャッフルが起こるかもしれない。
たとえ、それが別の死体だとしても、とりあえず、動かせるボディーがあれば、何かできることがあるはずだ。
(アマテラスを停止しよう)
わたしは決意した。
わたしには、それを実現することができる。
いや、正確に言えば、わたしには、アマテラスを停止する知識がある。
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