そして、神は降臨する

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とはいえ、わたしのこの姿では、まともに話を聞いてくれる人間はいないだろう。 記憶媒体にデータを残すしかない。 シンプルに紙とペンでもいい。 わたしは暗い地下をさまよった。 無人のようだ。 ふくざつな迷路のような廊下。 どこまで歩いても、人の姿はない。 ここは、おそらく、移民当初に作られた死体処理場だ。 もっと言えば、死体を液体化させ、植樹した若木の肥料に加工する施設。 まちがいない。 さきほどの死体のプールに満ちていたのも、ホルマリンではなく、死体洗浄液だったに違いない。 (ということは、アマテラスのいる管理者の塔にも近いぞ) わたしは有頂天になった。 重要な施設は、すべて管理者の塔の近辺に集められている。ここからなら、半日で管理者の塔へたどりつける。 今日にでも、アマテラスを停止できるーー 嬉々とした、わたしだった。 が、その瞬間だ。 背後で物音がした。 ふりかえるが、何もいない。 いるはずはないのだ。 ここは、死体処理場。 あるのは大量の死体ばかり。 死体を処理するのは、旧式のロボットだ。 なに……? わたしは背後の闇を見つめた。 柱のかげで、一瞬、何かが動いた。 わたしは、ふるえあがった。 立ちすくんだまま、何もできない。 「誰か……いるのか?」 おぞましい、うなり声が、わたしの口から、もれた。     
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