20人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
*
気づいたとき、わたしは、ふたたび、死体のプールにいた。奇妙なことに、さっきとは別の死体だ。さっきは男。今回は女だ。だから、ひとめで違いがわかった。
これは、どういうことだろう?
あれから、もう丸一日が経過したのか?
いや、どうしても、そんな感じはしない。
時間を知る手立てが周囲にはないが、なんとなく、丸一日もすぎたようには思えない。体内時計というやつか。わたしは、ふつうの人間よりは、野生の感覚がするどい。
(これは、アマテラスによるシャッフルではない……?)
どうも、そんな気がする。
わけはわからないが、とにかく、わたしは、ゆかに上がった。
ハッとした。
どこかで音がする。
かるい足音のような?
やはり、ここには、わたし以外の何かがいるのか?
物音は、だんだん、近づいてくる。
タタタっ。タタタっ。
かろやかな足音……。
わたしは身をかくせる場所をさがした。
だが、どこにも、そんな場所はない。
右と左に廊下のある、ふきぬけのような広い空間に、死体洗浄プールがあるだけだ。
わたしは、とっさに、プールのなかに、もどった。
ここに浮かんでさえいれば、わたしは死体の一つにしか見えない。
タタタっ。タタタっ。タタタタターー
最初のコメントを投稿しよう!