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また、ここからの出発か。
これで、何度めだ?
幸いというか、なんというか、わたしの乗り移るのは死体だ。痛覚はない。何度、首をはねられても痛くも、かゆくもないが。
このままでは、ここから出られない……。
その恐怖が、しだいに大きくなっていく。
頭上からモーター音がする。
あれはプールの死体をかきまわすアームの作動音だ。
あれじたいには危険はない。
わたしは、アームのかく乱に巻きこまれないよう、プールをあがった。
そのとき、ふと気づく。水面に何か浮かんでいる。さっきまでは、なかったはずだ。かく乱によって、沈んでいたものが浮きあがったらしい。
アームをさけながら、ひろいあげた。
それは、カードキーのようだ。
どこのカギだろう?
それに、まだ、使えるのだろうか?
疑問はあるが、とりあえず、持っていくことにした。
廊下をしんちょうに歩いていく。
まだ、あいつの気配はない。
いつ、どこから、おそわれるか、わからない。
しかし、碁盤目状に廊下のまじわる、あの場所までは来た。
わたしは試しにカードキーを使ってみた。
ドアのセンサーにかざすと、ロックの外れる音がした。
(ひらいた……)
ドキドキしながら、わたしはドアをあけた。
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