月光のガルー

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「マジだるい。腕がもうっ、力入んねーっての!」 喚きながら、ガシッと平たい所に手をかけた若者が身体を持ち上げようともがく。その尻と足の裏を押し上げるガルーの左足に、下から銀色の蛇トカゲが食らいついた。大柄なガルーの背丈よりも長い尾がパシィ、パシィと岩壁を叩いて石くれを飛ばす。 ずぶ、とブーツを貫通した長い牙が、ふくらはぎのすぐ下に突き刺さった。 「・・・・っ、おい、上がりきったら、すぐに次の岩壁を登れ!」 「はあ?! ちょっとは休ませろよっ!」 ああーおぅ。 ガルーの足に食いついた蛇トカゲの鳴き声に、若者がギョッと下を向く。若者の足がズルっと滑るのを見て、ガルーは蛇トカゲに刺し込もうと抜いたダガーの柄で、その足を支えた。 「のぼ、れ。アホウ!」 「え、あ、ああ」 よいせっと登りきった若者の身体が、見上げるガルーの視界から消える。 ガルーはひゅっひゅっとダガーを突きおろして、蛇トカゲの両目を潰した。悲鳴をあげた蛇トカゲが落ちながら、長い尾でガルーの背を打ち据えていった。 ガルーはダガーの刃を口にくわえ、岩壁の上まで一気に登り切る。 そこにヒョイと若者が顔を出したせいで、思わずのけ反ってしまい、もう少しで間抜けな死に様を晒すところだった。     
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