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わわっと奇声を上げた若者がガルーのマントをつかむ。ガルーは差し出された若者の手につかまって、平たい場所に身を投げ出した。
「ガルー! だ、だ、だいじょうぶか」
「おまえのせいで、うっかり死ぬところだった」
「いやそれ、激しくマズイから。俺困るし」
「だったら、あそこの岩壁も死ぬ気で越えろ!」
ガルーは立ち上がりながら、前方を指差す。
木の枝のような出っ張りだらけの岩壁が入り組んでいて、空との境目がキラキラとオレンジの輝きを放っている。日没が近い。顔には熱気を、足元には既にひんやりと冷気を感じる。
「いいか。連中は日のある内は噛むだけだが、夜になれば食事を始める。意味が分かるな?」
ガルーの脅しに、若者はうええっと情けない声をあげて、それでもヨタヨタと走り出す。
一応、頑張る気はあるようだ。
ガルーは怪我を気取られないよう、若者の背後につき、岩壁に飛びついた若者に、足をかけるべき出っ張りを次々に示していった。
ああー、ああー、と鳴く声が多数追ってくる。だが連中は、死に物狂いならば逃げ切れるだろうと思われる頻度で1匹ずつ襲ってくる。
(イヤらしい連中だ)
噛まれた左足と、ギザギザの尾でマントごと切り裂かれた背がじくじくと痛む。
だがこの岩山を抜けねば休むことはできない。
「ええっ、なんで?!」
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