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真っ青な顔をした若者がすぐ後ろで岩壁に張りついている。
「あっち! あ、あっちからもっ!」
若者が斜め上を指差す。ガルーはそちらを見上げながらガッカリした。
(俺はこいつに何を期待したんだ・・・)
ふ、とガルーと若者の顔に影が差す。
「ギャー?! と、飛んだっ、ガルー!」
「だから、なんだ!!」
ガルーはひとつ上の出っ張りに足をかけ、体重を乗せて伸び上がる。ダガーを突き上げて蛇トカゲの腹を刺し、引き抜くと同時に渾身の力を込めて体当たりをかけた。ヒュウッと蛇トカゲが腹をみせて落下していく。
は、は、と息が切れて、ガルーは汗ばんだ金髪を手の甲で拭った。
「おい、次が来る前に登り切るぞ。先に行け」
「あ、ああ」
放心する若者を急かし、どんどん赤くなる空を気にしながら、ひたすら岩壁を登る。そして開けた場所まで辿り着いた。
(こいつにはまだ運がある)
地平にほぼ沈んだ黄金が、空を真っ赤に燃やしている。色白の頬にその赤みを映した若者が、何かをこらえる表情で眼前の砂漠と地平を見はるかした。
(待ってやるのは、あの一度きりで終いだ)
ガルーはどん、とその背を押した。
「蛇トカゲは砂漠には入れない。急ぐぞ」
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