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妻の容態は悪くなる一方だ。
タオルで止血した腕を抱きかかえるようにして、ソファーに横たわる妻。
苦しそうに呻きながら全身を震わせている。
額にはあぶら汗が滲み、胃の中の物は全て吐き出した。
呼び掛けても意識は朦朧とし、虚ろな瞳からは光が失われていった。
三時間もすると明らかに妻が変貌していくのが見て取れた。
瞳にもはや生気は無く、焦点が合わない。
だらしなく開いた口からは絶えず唾液を垂れ流していた。
頻繁に大きな痙攣を起こすようになり・・・・・・。
数度目の痙攣の際、ソファーから転がり落ちた。
床に這いつくばったままの妻を起こそうと手を差し伸べた時である。
突然訳のわからない言葉を叫びながら、狂ったように四肢をばたつかせ出したのだ。
その形相に、愛した妻の面影はもう無かった。
この時俺は、妻が元に戻る希望を捨てた。
歯を剥き出し俺に襲いかかる姿は、凶暴な獣そのものだった。
これはもう妻ではない。
「エミリオ!逃げるんだ!!」
絞り出すような唸り声を上げながら掴みかかってくる獣の肩越しに、蒼白な顔で呆然と立ち尽くすエミリオの姿を見た。
もう家族を失うものか!
殺らなければ・・・・・・!!
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