狂気の末路

6/14
前へ
/14ページ
次へ
滲み、ぼやける視界。 俺は妻の体を思い切り突き飛ばした。 バランスを崩し、背後にあったキッチンカウンターに雪崩れ込むようにぶつかる妻。 その衝撃でグラスや食器が次々に床へと落下し、派手な音を立てて割れていく。 妻は仰向けで破片が散らばる床へと崩れ落ちた。 醜くもがき、聞いたこともない低い声で呻きながら起き上がる。 「ああ・・・・・・」 露出した腕や脚にガラス片が突き刺さった痛々しい姿。 髪の毛を振り乱し、再び襲い来るその前に。 俺は・・・・・・。 「許してくれ・・・・・・!!ジュリア・・・・・・ーー」 バァン!と乾いた音が数発、鼓膜を震わせた。 直視出来なかった。 顔を背け、引き金を引く。 何度も。 何度も。 やがて、ドサリ・・・・・・と、意識無い者が倒れる音がした。 俺は、妻を・・・・・・ 妻であったものを殺した。 背を伝う生温かい感触。 噛まれた傷口が脈を打ち、熱を帯びたように痛む。 俺も感染者だ。 エミリオ・・・・・・! 愛する息子を振り返る。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加